2008年3月22日土曜日

@62:なぜ「インドネシア 鳥インフルエンザ情報」を始めたか

このブログを始めて、今日で一週間になります。小樽保健所長外岡先生の「鳥及び新型インフルエンザ海外直近情報集」野田敬生氏が運営する「ESPIO」でご紹介いただいたおかげで、想像したよりも多くの人に訪れていただき、感謝の気持ちとともに、いい加減な事は書けないと、感じているところです。

私自身、鳥インフルエンザ、新型インフルエンザの専門家でもありませんし、インドネシア語翻訳のプロでもありませんが、そんな私がどうしてこのような事を始めたかということを、少し書いてみようと思います。

インドネシア共和国は、東西5000キロ以上に日本の約5倍の面積を持ち、大小1万7千以上の島から構成される国土に、約27の民族からなる約2億4千万人、世界第4位の人口を抱える国家です。また人口の約87%という、世界最大のイスラム教徒を抱えています。

私は現在、首都ジャカルタに住んでいます。雨季と乾季しかない平均気温25度以上の熱帯気候は、知らない人からは住みにくいと思うでしょうが、思ったよりも暮らしやすく、貧富の差が激しく混沌とした社会ですが、世界一やさしい人と言われる人々や、バリ島を含む各地の美しい自然など、何年住んでも魅力的な国です。

そのインドネシアで、最初に家禽類で鳥インフルエンザ感染疑いが起きたのが2003年。その後2005年に初めてヒトへの感染が確認され、2006年5月には北スマトラのカロで8人の集団感染が起きています。その後も感染拡大は収まらず、本日現在WHOの発表では、感染129人うち死亡105人と、世界最大の感染者を出しており、家禽では33州のうちの31州で、1千2百万羽以上が感染死しています。(参照:在インドネシア日本国大使館情報

ここに暮らしている私自身にとって、鳥インフルエンザは、対岸の火事などではなく、まさにそこにある危機なのです。

日本から見れば、インドネシア政府はしっかりとした対策も取らず、またWHOにも非協力的で、とんでもない国だと映るでしょう。しかし、この国にはこの国の理由があるのも、また事実です。

例を挙げれば、世界最大のイスラム教徒、また貧富の差が激しいこの国で、鶏肉や鶏卵は庶民でも口にできる、唯一不可欠の動物性蛋白源です。養鶏業者だけでなく多くの人があらゆる場所で家禽の飼育をしており、この事が、家禽類の処分やそれに伴う政府の補償を困難にしています。
また、多くの人が冷蔵庫を持たないため、全国各地の伝統的市場では、鶏は生きたまま、目の前でイスラムの教えに従った屠殺方法でさばかれ、売られています。

低所得者が多く、日本のように健康保険もない状況は、感染の早期発見を難しくしています。通常、病院では前払い、預け金が無ければ、診察も投薬も受けられません。実際は政府はデング熱や鳥インフルエンザに対しては、国の負担で治療を行うプログラムを提供していますが、多くの人はこうした情報も知らず、悪化するまで、病院に行かず民間療法に頼っているというのが実情です。その上イスラム教では死者は、一日の間に埋葬されなければなりませんから、公式に発表されている感染者数は氷山の一角という見方もあります。

また、国土が非常に広い上に、スハルト政権以降、地方分権を強めてきた政治は、中央からの通達やその徹底を難しくしています。政府や国際機関からの補助金も、汚職の多いこの国では、当初の目的に使われるのさえ難しいのかもしれません。

さらに、最近は鳥インフルエンザ対策を推進していく立場の保健大臣も、WHOや欧米との確執を深めており、どれだけ国内外に正しい情報が伝えられているのか、またマスコミが報道統制を受けていないと言えるのか、疑問が生じてきます。

このように、いくつもの複雑な状況が絡み合う中で、鳥インフルエンザの家禽での感染拡大、止まらないヒトへの感染等、状況が悪化しているのは事実であり、私自身非常に不安に感じて、インターネットを通じて情報を集めるようになりました。

多くの国内メディアは、まだ鳥インフルエンザに対する意識も高くなく、継続性が無く、感染の疑いが報道されても、そのフォローアップがきっちりとされていません。そんな中、最初にも挙げた、小樽保健所の外岡先生と、ESPIOの野田敬生氏のサイトに出会い、自分の時間のすべてをこの問題に投入していると感じ、強い意思と努力に心を打たれました。また、インドネシアの情報の多くが英訳もされず、国内に埋もれたままになっており、それがこうした活動をしている方々の障害になっているのでは、と感じました。

このことが、きっかけとなり、ここに住んでいる自分が何かできないか、と考えた結果がこのブログです。訳もへたですし、自分の時間を全て費やすほどの強い意志も持ち合わせていません。時々いただくコメントを見て、少しは役に立つことができているのだろうか、と勇気が出ます。

私自身、このブログを通して危機を煽ったり、個人の主張をしていくつもりもありませんし、それだけの専門性も持ち合わせていません。インドネシアで何が報道されているのか、インドネシアは今何を考えているのか、ということを、自分のできる限り、ありのまま伝えていきたいと考えています。

私の書いたことに誤りがあったり、ご意見や、ご批判がありましたら、ぜひコメントでもメールでもご連絡をください。読んでいただける人が多ければ、それだけやる気も出ますし、嬉しいというが正直な気持ちです。

3 件のコメント:

toshihaya さんのコメント...

 毎日ご苦労様です。ありがとうございます。コメントは出さないたくさんの読者がこのブログを読んで感謝していると思います。
大変ですが、お体に気をつけて頑張ってください。

Unknown さんのコメント...

いつも読ませて頂いています。私は今、カラワンに住んでいます。この辺には日本人もいないので、こちらのブログがとてもとても重要な情報源となっています。 

雨季が長引いています。お体に気をつけて,
これからもブログ、続けてくださいね!
いつもありがとうございます。

Keisei さんのコメント...

コメントいただき、ありがとうございます。
同じインドネシアに住んでいる方のアクセスはまだまだ少ないので、正直のところ嬉しいです。これからもよろしくお願いいたします。