2008年5月1日木曜日

@62:麻痺の習慣


日本では、ゴールデンウィークだというのに、秋田県の十和田湖で、鳥インフルエンザH5N1ウィルスに感染した白鳥が3羽見つかって、大騒ぎである。

日本の厚生労働省は、「人への感染可能性は極めて低い」と冷静な対応を呼びかけているらしいが、そんな事でいいのだろうか?この病気で、世界では、既に382人が感染し、241人も死亡しているのである。安心など呼びかけて何の意味があるのだろうか。

一方、世界で最も多くの死者を出し続けている、インドネシアでは、毎日、中部ジャワや西ジャワの各地で、何十羽、何百羽の単位で、ニワトリや、アヒルや、ウズラが、このH5N1鳥インフルエンザウィルスに冒されて、次々に死んでいるが、地方紙が紙面を埋めるための、小さなニュースを掲載するだけである。

さらにもまして、昨日インドネシアの保健省が、133人目の感染者で108人目となる、中部ジャワ州Wonogiri県での3歳の男児の死亡を発表しているが、本日、Web上でのニュースを探してみても、わずかに数誌が取り上げているだけである。

インドネシアのカラ副大統領は、「鳥インフルエンザは世界中の注目の的で、インドネシアはしょっちゅう悪口を叩かれているが、国内では交通事故で毎年3万人も死んでいて、一方の鳥インフルエンザは100人にも満たない」などと、訳のわからない比較をしている。(4/20 Tempointeraktif)

鳥インフルエンザ対策の責任者である、保健大臣は、「普通は毎月10件近くあるが、今年の3月、4月は、2件の感染報告だけで、鳥インフルエンザ感染は減少している」などと、全く根拠の無い説明をし、ウィルスの提供問題を巡って、WHOや米国と確執を深めている。(4/13 Metro TV 上の写真)

インドネシアのマスコミも、感染疑いが発生すると、次々にニュースにするが、結果がどうだったかのフォローもない。今月このブログで取り上げただけでも、23人の感染疑いの報道があったが、結果がフォローされたのは、10人だけである。あとは、ひょっとしたら感染陽性で、いつの日か突然感染者として発表されるかもしれないし、あるいは、陰性で報道もされないということだ。

上に挙げてきたような、過敏な反応、無責任な発言、いい加減な報道が続けられることを、私はとても恐れている。そのうちに、一部の人を除いて、情報を信用しなくなり、”麻痺の習慣”によって、多くの人の危機意識が薄らいでしまうだろう。

現にインドネシアの国内を見ればよくわかる。多くの人は正しい知識を持たず、危機感も無い。在住している邦人も、決して全部とは言わないが、同じように”麻痺の習慣”に冒されてしまっている人がなんと多いことか。日本もまた同じである。

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